先週の日曜日(18日)に投開票された大阪市長選で、いくつかの報道機関は午後8時に当選確実を速報した。
「午後8時」にどんな意味があるかというと、投票が終わった時間である。
つまりは、開票開始を待たずに当確を報じている。
午後8時に速報した会社は、ほんの数分〜数十分の差なのに「他社に勝った」と大喜びらしい。
「午後8時」にどんな意味があるかというと、投票が終わった時間である。
つまりは、開票開始を待たずに当確を報じている。
午後8時に速報した会社は、ほんの数分〜数十分の差なのに「他社に勝った」と大喜びらしい。
最大の根拠は、出口調査だ。
投票所を出たところで「誰に入れましたか。指して下さい」と聞かれる、あれである。
出口調査でどのくらいポイントが開けば逆転はあり得ない、という経験則にもとづいて「早打ち」をする。
しかし、出口調査に頼る風潮が強まった結果、起きていることがある。
選挙の際の記者の取材力が明らかに落ちているのだ。
とりわけ、それは有権者に対する取材で顕著に表れている。
一般の市民が何を考え、どういう基準で、どういう理由で、誰を選んだか。
選挙の最も基本となるべきテーマについて、きちんと取材しない記者が増えていると感じる。
今ほど出口調査が充実していなかった時代には、記者が十分に有権者の「風向き」を把握できていなければ、開票の様子を見ながら自信をもって「当確打ち」を できなかった。
今は「出口調査でわかるから、いちいち有権者の生の声を聞かなくてもいいや」という理屈なのだろう。
誰に入れたかだけを知るのが目的の出口調査では、真の意味での投票行動の解明などできはしないのに。
だから、選挙結果の分析記事は薄くなる一方だ。
大阪市長選も、少なくとも東京の紙面で見る限りは、政党や組織の言い分を集めた、当たり障りのない定型記事の枠を出ないものばかりだった。
ほんの何分かの速報のために膨大な費用と人手を投じるのなら、もっと大切な「なぜ」を伝えることに、もう少し費用や人手をかけるべきではないのか。
とはいえ、そんな意見は報道機関の内側ではほとんど聞かれない。
唯一の解決策、それは出口調査で誰に入れたかを問われた有権者が、本当のことを言わないことだ。
出口調査の結果に信憑性がなくなれば、記者は自分の足を使って有権者と向き合わざるを得なくなるだろう。
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