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地方あっての都市

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東京出身ながら地方でも相応の年月を暮らしてきた私には、「東京人」の地方に対する言動が腑に落ちないことが間々ある。
都市部に税収が集中している法人事業税の一部を新税に替えて、税収の少ない地方に再配分しようと政府が計画している。地域間の税収格差の是正が目的という。これに、東京都など都市部の自治体が反発している。

「法人としての受益者負担ということで払っているわけだから」と東京都の石原知事は記者会見で述べた。知事就任時に今の半分ほどだった法人税額を増やしたのは、自分たちの「内部努力」があったからだと強調もしているそうだ。

しかし、法人税額が伸びているのは、どう考えても景気回復のおかげだろう。そして、景気回復を果たし得た都市部の生活基盤を支えているのは、言うまでもなく地方でもある。

最も象徴的な例が、米軍基地や原子力発電所といった迷惑施設だ。「国策」の名のもとに、多くを地方に押しつけている現実から目を背けてはいけない。都会の住民と企業は、危険や騒音から離れたところにいながらにして、「安保の義務」を果たし、電気もたっぷりと使うことができる。

政府の手法への反発があるにせよ、「地方あっての都市」という視点が決定的に欠けたまま、果実だけを丸取りするのは公平ではない。

最近、裕福な財政に裏打ちされた東京の自治体のぜいたくな施策を実感することが多い。例えば、中学生まで医療費が無料なのは23区では当たり前だが、静岡くらいの県でもそんなことが出来る自治体はほとんどない。品川区の区立小中一貫校をはじめ、先端の教育施設のゴージャスぶりには目を見張る。

少子化対策や教育といった分野で、都市と地方の「格差」がどんどん広がっていることを危惧する。子育て世代の都市への集中が、ますます加速するのではないか、と。そうなったら、地方の将来を誰が担うのだろう。それは、必ずや都市の生活に影響を与える。

都市が膨らみ続けるばかりでいいのか。地方は衰退していくだけでいいのか。とくに東京に住む人たちは真剣に考えたほうがいい。今のままでは、いつか必ずしっぺ返しがくる気がしてならない。

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