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落としどころ

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----という話を、ある社長さんと話しました。中国やロシアを主な取引相手としている専門商社のトップ。明るく楽観的、かつタフな人でした(でないと、あの隣国と商売はできないのでしょう)。

「商売であっても、最初にするのは、お互いに会社の理念を伝えること。そして両者が共有できる価値を見つけること。それが基本です」

そこから交渉が始まる。互いに相手の姿勢はわかった。じゃあ、どこで折り合をつけようか?

「商談に100点満点はありません。どこかで妥協しなければならない。こちらが相手に何を提供し(ギブ)、その見返りとして相手から何を得るか(テイク)? 貿易は双方が利益を得られるときにしか成り立たないから、その落としどころを探る。それがわれわれの仕事なんです」

これは商売だけの話ではありません。うちの子供だって「次のテスト100点とったら、遊戯王カード買ってほしい」と条件を提示します。一方、親の私は「3回連続で(100点)とったら」といい、「なら2回で」「オーケー」といった白タクとの料金交渉みたいなことをするわけです。

ところが、いまの与党政治家は交渉をしているのでしょうか。

先般の薬害C型肝炎訴訟の原告団が求めた「一律救済」に対する政府の対応は、およそ交渉当事者とは思えないものでした。原告と政府は「東京地裁判決の基準から外れた被害者を救済する基金の金額」で対立していたわけではありません。争点は福田首相の「政治決断」の有無であり、原告は政治決断を求めているのに、首相は「専門家(官僚)の意見を十分に聞いて検討した上で回答する」と答えている。この時点で政治決断がないのは見えていた。

最初に「政治決断はできない」理由をきちんと相手に伝えるべきだったと思います。それを時間稼ぎしたあげく、「基金を8億円から30億円に積み増す」ことを提示して、「これ(基金増額)が"政治判断"だ」(舛添厚労相)と言う。相手に深い不信感を植え付ける。最悪の結果

卑屈な笑みをときおり浮かべる舛添厚労相や、他人事のような口ぶりの福田首相と、「舛添さんは官僚と心をひとつにしてしまった」と涙をこらえ、胸を張って語る原告団の福田衣里子さん(27歳)。

どちらに人間的な強さと優しさが備わっているか。

国内でこんな対応をしていては、国際的な交渉の場である外交でも、お寒い想像しかできません。くだんの社長さんは、

「たとえば"北朝鮮に対して弱腰外交はしない"とか"(ロシアには)北方領土の4島一括返還を譲らないぞ"とか、強さをアピールする政治家がいるでしょ。あれ、楽なんですよ。厄介な相手とぎりぎりの妥結を探る交渉よりも、自国民に対して"あいつが悪い"って怒っていれば、勇ましく見えるから」

解決困難な問題に対して原理原則を振りかざすのは怠慢だと思います。

福田首相ほか、二世、三世議員って、親や友達と、あるいは学校や会社で交渉して、自分の要求を通すということをしてこなかったのではないか。蝶よ花よと育てられながら、それを帝王学とかと勘違いしてたりして。

「彼ら(政治家)は金を使うことばっかりで、稼ぐこと、考えたことないからねえ」というのも社長さんの弁でした。

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