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きこりの復権

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日本の木材加工機械メーカーにロシアからの引き合いが増えているそうです。広大な地に豊富な森林資源をもつシベリアや極東では、日ロの合弁による木材加工工場も稼動しているのですが、ロシア政府が来年から原木の輸出税を大幅に引き上げる(実質的な禁輸)ため、いままで丸太を日本に輸出してきたロシアの会社は、自分たちでベニヤにしたり、住宅材にしたりしなければなりません。でも、そのための機械も技術もないから、日本製を買うというのが理由らしい。


原油や天然ガス、あるいは希少金属などの天然資源の価格が高騰を続けるなか、ロシア政府は「これまでのような資源の安売りはしない」と宣言したわけです。「いつまでも自国の資源を売って、外国からモノを買う国であってはいけない」という危機感もあるのでしょう。

日本に安い北洋材が入ってこなくなると、日本の住宅価格も上がるかもしれません。でも、国土の70%が森林という日本が、遠いシベリアから原木を買っていたのが異常だったともいえます。

おかげで樵(きこり)という職業が廃れました。林業に携わる人が減れば、森林はきちんと間伐されなくなる。木々が密集して日光が当たらなくなると、枯れてしまい、山が荒れる。近年、猿や猪などによる農作物の被害が増えているのは、自然と人間が共生するかつての里山が少なくなったからだといいます。

原木が入らないことで、日本の木材加工機械が外国に売れる(国内のシェアは年々縮小しているそうです)。国内の森林資源を見直す機会になる。森林は二酸化炭素を吸収するから、京都議定書のCO2削減目標達成に貢献する。禁輸によるマイナスよりプラスの方が多いみたい。

ロシアや中国では、日本産のフルーツがよく売れているそうです。モスクワのセレブが買いにくる高級スーパーで、私は1個1,500円の青森産りんご「ふじ」を見たことがあります。異常な価格ではありますが、アメリカの金融危機によって日本の自動車のアメリカ向け輸出が減ると、日本経済全体も深いダメージを受けるような構造から、重点をもう少し1次産業へ移行させることで、国民はいまより多少は安心して暮らせるのではないか。

むかしばなしに登場する大人は、たいてい農林水産業に従事しています。なかでも「きこり」は、子供の私にとって一番ミステリアスでした。深い森のなかで1人、天までそびえるような太い幹に向かって、黙々と重い斧を振り下ろす。かっこいい。そんな姿を思い浮かべたからです。

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