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少年・少女に自らを語るとしたら

昨年末、欝と不眠症で悩んでいた友人から、その原因が、その年に亡くなったお父さんの存在にあることを聞きました。自分は常に親父の背中を見て育った。いつも親父に褒められたいと思ってがんばった。けれど、期待にこたえられなかった。そうした感情がお父さんの死をきっかけに溢れ出たそうです。

当時、彼は降圧剤を常用していたのですが、最近、薬ではなく、運動療法を始めたとのこと。「自分と父親との関係を他人に話したことで、気持ちがすこし楽になった」とか。

私はといえば、彼の父親との関係が、(不謹慎な言い方かもしれませんが)とても面白く、彼の話にすっかり聞き入ってしまいました。たぶん彼が率直に自分と向き合い、そこから出てきた言葉で語ったからではないかと思います。

先日、ワルシャワに赴任している上司からメールを受け取りました。今度、在ワルシャワ日本人学校の少年・少女たちに、自分の思い出に残った本という題名で講演をするそうで、そのレジュメを送ってきたのです。本とは福沢諭吉の「新版福翁自伝」。レジュメを読んでみると、「なぜ福沢諭吉なのか」が「なぜ自分は(日本の)大学で経済学を専攻したのか」や「なぜ自分は社会主義時代のポーランドに留学したのか」とつながっているのがわかる。

それがちょっとした感動でした。プライドの高い人ですが、自分の恥ずかしい部分も隠さず書いている。子供たちに向けて、かっこつけたって、ばれてしまうのがわかっているからでしょう。自分の来し方を振り返り、素直な心情から出てくる言葉じゃないと、子供たちには伝わりません。

仕事・プライベートを問わず、人生で行き詰ったとき、「自分のことを子供たちに語るとしたら、どうするか」をシミュレーションするといいかもしれない。自分自身を納得させられる言葉がみつかるかも。二人の話から、そんなことを考えました。

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