その人は成田空港内で、鞄からおもむろにオペラグラスを取り出して、両目にあてました。
「な、何やってんですか?」
「な、何やってんですか?」
「飛行機の発着時刻のボード見ようと思って......」
確かに、搭乗者用入り口の上に設置されている大きな黒の時刻表を、オペラグラスで眺めています。その姿を私が横で見ていると、
「ぼく、目が悪くてさ、よく見えないんだよね」
聞けば、海外出張のときは必ずオペラグラスを持参しているとか。
「校庭に白線引くための石灰があるでしょ。小学校のとき、同級生にそれを目に入れられてさ、それから視力が落ちちゃったんだ」
ひどい話だ。
「映画なんてさ、字幕が読めないから、ずいぶん行ってないなあ」
というか、眼鏡、買ったほうがいいんじゃないですか?
「うーん、でも、眼鏡かけると、見たくないものまで見えちゃうからねえ」
私は相槌を打ちたいような、打ちたくないような。でも、その人がいつも穏やかなのは「いやなもの」を見てないせいなのだと納得しました。「ときどき鋭い指摘をする」のは、余計なものを見ないから、本質をつけるに違いない、とも。
彼の世界観に興味がわきました。
確かに、搭乗者用入り口の上に設置されている大きな黒の時刻表を、オペラグラスで眺めています。その姿を私が横で見ていると、
「ぼく、目が悪くてさ、よく見えないんだよね」
聞けば、海外出張のときは必ずオペラグラスを持参しているとか。
「校庭に白線引くための石灰があるでしょ。小学校のとき、同級生にそれを目に入れられてさ、それから視力が落ちちゃったんだ」
ひどい話だ。
「映画なんてさ、字幕が読めないから、ずいぶん行ってないなあ」
というか、眼鏡、買ったほうがいいんじゃないですか?
「うーん、でも、眼鏡かけると、見たくないものまで見えちゃうからねえ」
私は相槌を打ちたいような、打ちたくないような。でも、その人がいつも穏やかなのは「いやなもの」を見てないせいなのだと納得しました。「ときどき鋭い指摘をする」のは、余計なものを見ないから、本質をつけるに違いない、とも。
彼の世界観に興味がわきました。
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