東映アニメーションのシンボルマークは、アニメーション映画『長靴をはいた猫』の主人公ペロ。これを描いた森康二さんは、21年前の9月5日にこの世を去りました。
森さんは1925年鳥取市に生まれ、台湾で育ちました。建築家を志し、東京美術学校(現東京芸大美術学部)建築科に入学。在学中に『くもとちゅうりっぷ』 や敗戦後流入したアメリカのカラー短編アニメーションを見て、アニメーターに方針転換します。1948年、日本動画に入社し、前述の『くもとちゅうりっぷ』を制作した政岡憲三らに師事。しかしまだアニメーション制作環境は悪く、業務縮小で西武百貨店宣伝部に転職し、その傍ら数多くの童画、挿絵を発表しました。日本動画は日動映画として再建され、ここに再就職します。
日動映画が東映傘下となり、東映動画として再出発すると、森さんは作画や制作の最前線で指導的な立場となります。日本最初のカラー長編アニメーション映画『白蛇伝』をはじめ、『わんぱく王子の大蛇退治』『長靴をはいた猫』などの長編、『こねこのらくがき』などの短編を作りつつ、後進に多大な影響を与えました。大塚康生、ひこねのりお、高畑勲、月岡貞夫、小田部羊一、宮崎駿、杉井ギサブローといった錚々たる面々です。1973年に退社し、ズイヨー映像に移籍。1975年からは日本アニメーション所属となりました。
ここでは、いわゆる名作アニメを多く手がけました。『山ねずみロッキー・チャック』をはじめ、『アルプスの少女ハイジ』『フランダースの犬』『くまの子ジャッキー』などの設定・作画監督として活躍。同時に雑誌「別冊幼児と保育」(小学館)の表紙も長く担当するなど童画家としても作品を発表し続けていました。しかし長年の目の酷使で、最晩年は視力が相当衰えていたそうです。作品に対する真摯な姿勢と誠実な人柄で、森さんのことを「アニメーションの神様」と呼ぶ人もいるほど。その作品は今も生き続けています。