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日めくり編集メモ 005

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地下鉄人形町駅前のビルの前に「寄席人形町末広跡」と記された碑があります。かつてここには「人形町末広」という寄席がありました。万博開催を間近に控え、70年安保で騒然とするなか、惜しまれつつ廃業しました。

人形町界隈は「葭町芸者」で有名な花街ということもあり、演芸場が集まっていました。中でもこの「人形町末広」は格式の高さで知られ、「寄席の"歌舞伎座"」という噺家もいたそうです。

 

末広の開業は1867年ですから慶応3年、まだ明治維新の前。関東大震災後に再建した建物が戦災を乗り越え、残っていたのです。下足番がいて畳敷きの、江戸以来の風情を残した寄席でした。しかし娯楽の多様化という時代の波には逆らえず、19701月二の席を最後に103年間の営業に幕を下ろすことになりました。

 

最後の120日は満員札止め。「いつもこのくらい客が入っていれば、廃業することはなかったのに...」と思った人は多かったことでしょう。鉄道の廃線や劇場の終焉など、「最後」にはいつも同じことが繰り返されるようです。

(参考文献:吉田章一『東京落語散歩』青蛙房、山本進『図説 落語の歴史』河出書房新社)

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