地下鉄
人形町界隈は「葭町芸者」で有名な花街ということもあり、演芸場が集まっていました。中でもこの「人形町末広」は格式の高さで知られ、「寄席の"歌舞伎座"」という噺家もいたそうです。
末広の開業は1867年ですから慶応3年、まだ明治維新の前。関東大震災後に再建した建物が戦災を乗り越え、残っていたのです。下足番がいて畳敷きの、江戸以来の風情を残した寄席でした。しかし娯楽の多様化という時代の波には逆らえず、1970年1月二の席を最後に103年間の営業に幕を下ろすことになりました。
最後の1月20日は満員札止め。「いつもこのくらい客が入っていれば、廃業することはなかったのに...」と思った人は多かったことでしょう。鉄道の廃線や劇場の終焉など、「最後」にはいつも同じことが繰り返されるようです。