「会長と副会長はもう来ていますので、さ、キシさん、どうぞ、どうぞ」
校内で待ち合わせをしたマツモトさんが私を促しました。
現PTA会長・副会長との面談は小学校のランチルームで行われるそうです。ランチルームは、毎月、お誕生日を迎えた子供たちが特別給食を食べたり、保護者の授業参観日に休憩所や会議室として使われたりします。
面談にはマツモトさんも同席するのですが、ランチルームに行くまで、周囲をきょろきょろして、落ち着きがありません。
その理由は守秘義務。会長が正式に選出されるまで、候補者の名前を口外してはならないというのがルールだそうです。
生徒たちの授業中、私たち2人は足早に廊下を通り抜け、校舎の端にあるランチルームに入りました。そこにはフジモリ現PTA会長とコジマ副会長が待っていました。
会長は男性、副会長は女性です。早速、仕事の内容について聞いてみると、
「会長はいわば学校の顔。外との折衝が中心だから大変ですよ」、「(PTA役員を務める人は)主婦じゃ無理。家庭を犠牲にしなければならないから」など、話はご本人たちの持論が多く、日々どのような仕事をして、それにはどのくらい時間がかかるのかといった肝心の説明が少ない。しかも「PTA会長(という職)は男でないといかがか」(フジモリ会長)とか、「自分が以前会長を務めていたとき、家事がおろそかになったと主人に言われて、『私だって、一生懸命がんばっているのよ』と泣いてしまった」(コジマ副会長)といった話を聞いていると、「PTA会長はあなたには無理」と言われている感じがします。2人とも自分の心情を語っているだけで、他意はないと思うのですが。
「どうでした?」
会長・副会長と別れた後、マツモトさんが私に聞くので、自分が受けた印象を正直に伝えました。
「いえ、いえ、そんなことはありません。会長は人それぞれですから、キシさんが(会長に)なったら、ご自分のやりたいような運営をしてくれればいいんです」
マツモトさんは相変わらず、一生懸命な口調で語ってくれます。そのとき私は生来の負けず嫌いが顔を出し、あえて「女性の自分がやってやろう」という気持ちになっていたのですが、その前に確認したいこと=どうしてPTA会長の選出を秘密裡に進めるのか? についてマツモトさんに聞いてみました。
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