以前、PTA会長候補者の名前が漏れたとき、その人物を好まないグループが別の人を担ぎ出すなど、水面下でいろいろな動きが始まってしまった。それを避けるため、周囲に知られないように事を進めることにした。だからPTA会長だけは立候補を認めず、役選委員会が他薦に基づいて決める――マツモトさんの説明を要約するとこうです。私自身、PTA会長が誰になるかについて、あまり関心がなかったので、裏でそんな動きが起こること自体、驚きでした。派閥の領袖が密室で首相を決めていたむかしの自民党みたいだなあと。
ただ、そこで考えてしまいました。総理大臣になりたい、あるいは派閥から首相を輩出したいという気持ちはわかるけれど、PTA会長の場合、なって得することはあるんだろうか?
完全なボランティア活動でありながら、かなり多忙な役職です。なかにはPTA会長就任をステップに、市会議員や県議会議員に立候補するという人もいるようですが、大半は普通の人。
「確かに(PTA会長は)忙しいばかりで、報われることは少ないかもしれません。以前、複数の人に推された方に就任のお願いしたところ、いきなり『私はそんなに嫌われているんですか?』と訊かれたことがあります」
その人は「いじわるで自分の名前を書かれた」と思ったそうです。それだけ大変な仕事ということなのでしょう。
もしかして私も(嫌われているのだろうか)? そんな疑問を抱きつつ、就任してもメリットのない役職=PTA会長だから、「談合」みたいに決められるのかななどと、そのときは妙に納得した次第です。私は数日後に最終的な答えを出すことになりました。
「今回のPTA会長選出、難航しているんだって」
翌日、娘の同級生のお母さんから話題を振られました。そういうとき、私は「ふーん、そうなんだ」と知らぬふりをしなくてはなりません。
「今度は誰がなるのかしらね」
と言われてもノーリアクション。ただ、
「私、今回PTAの役員をやろうと思っているんだけれど、どう思う?」
と息子の同級生のお母さんから相談を受けたときは、シラを切るわけにはいきませんでした。
「実は会長になってくれと頼まれているんだけれど」と伝えると、
「会長が女性なら私もすごくうれしい」
という反応が返ってきました。他にも同じように考えているお母さんたちがいると聞いて、彼女たちに背中を押されるように、私は決心しました。
「えっ? 本当にいいんですか! よかったあ」
昨年12月、マツモトさんにPTA会長を受ける旨を電話で伝えると、「やっと肩の荷が下りた」という感じの安堵の声が受話器から聞こえてきました。
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