昨年(2009)11月、「PTA役員選出委員会のマツモトですが......」との電話がありました。マツモトさんとは面識がありません。学校関係の連絡事項かなと思っていたら、彼女は恐縮した様子で、
「実はキシさんのお名前が挙がっているんです」
いったい何に? マツモトさんの次の言葉を待ちました。
「先日のアンケートを集計したところ、キシさんが複数の方から『PTA会長』に推薦されておりまして」
えっ、どうして私が? 寝耳に水でした。
そのアンケートとは毎年秋、保護者全員に配られるものです。そこにPTA会長に推したい人の名前を書いて、無記名で提出します。
立候補者がいるわけではありません。本人の意志がわからないのに、勝手に人の名前は書けない。そう思って、私はずっと白紙で出していました。
「おっしゃるとおり、白紙回答がほとんどです。名前が挙がったとしても10人くらい(ちなみにこの小学校のPTAメンバーは約350人です)。複数の人に推薦される方はほんの一握りです」
その一握りのなかに私の名前があるとのこと。
「いかがでしょうか」
受話器の向こうで遠慮がちなマツモトさんの声がしました。
私はお母さん同士の付き合いもほどほどに済ませていました。積極的にPTA活動に参加していたわけではなったので、自分が推薦される理由がわかりませんでした。だから、
「名前を書いていただいたのは、大変ありがたいのですが、仕事も忙しいですし、難しいと思います」
と丁重にお断りしました。するとマツモトさんは、
「それではまた改めてお電話いたしますから、考えておいてください」
と言って電話を切りました。その声には「ここでPTA会長就任を断られたらどうしよう」といった、藁にもすがる気持ちが感じられたのでした。
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