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オシムからの旅  木村 元彦/理論社

「ワールドカップ2010」が始まった! 試合の間に放映される深夜のWCドキュメンタリーの再放送を観て、「ドーハの悲劇」の悔しさをまた思い出していたら、ふつふつと盛り上がってきた。やっぱり観るぞー!寝不足になっても。ということで、サッカーにちなんだ本のレビューを。今週「マガジン9」でもアップしています。

 本書は理論社が刊行する、主にティーンエイジャーを対象とした「寄り道パン!セ」シリーズの一冊である。

 サッカー選手として輝かしいキャリアを誇るドラガン・ストイコヴィチが、Jリーグの名古屋グランパスにやってきたのは1994年だった。当時、愛知県に住んでいた著者は、来日当初のストイコヴィチがピッチでイラつく姿が気になった。どうしてこの選手が「ピクシー」(妖精)という愛称で呼ばれているのか ――そんな疑問が著者を、ストイコヴィチ、そしてユーゴスラビア代表時代の彼を指導したイビツァ・オシムの国、ユーゴスラビアへの旅に導いていった。

 6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字、そして1つの国家――ユーゴスラビアの民族問題を10代の読者に伝えることは容易ではない。国際社会でさえ、複雑な多民族国家で起こった民族間の紛争を「セルビア=悪玉」と単純化し、一方を非難する愚を犯してしてしまったほどだ。

 1980年代後半から、ユーゴの各共和国では民族主義の火が局地的に燃え上がっていた。そしてベルリンの壁崩壊後の1990年・イタリア・ワールドカップ。世界のサッカーファンから、最もファンタスティックなプレーヤーたちと評価されたユーゴ代表は国内の民族主義者からブーイングを受けた。民族主義者にとって、「ユーゴ」という国は虚像でしかなかったからである。

 自国サポーターなきユーゴ代表の監督は、サラエボ出身のイビツァ・オシム、チームの中心はベオグラード生まれのストイコヴィチだった。彼らが民族主義の猛威にいかに堪え、世界のメディアによる偏向報道やNATOによるユーゴ爆撃にいかに抗議したかについては、本書を読んでほしい。

 サッカーには民族感情を刺激する面がある。だが、オシムやストイコヴィチの苦闘を通して見えてくるのは、多様性こそが強みだということだ。1998年のフランス大会で優勝、前回のドイツ大会で準優勝を果たしたフランスチームの中心は、ジダンやアンリに代表される移民の子孫たちであった。今回、ヨーロッパ予選で強豪ロシアを倒してW杯出場を決めた旧ユーゴ共和国のひとつ、スロベニアの選手には、セルビアやクロアチアから移住してきた人々の子ども世代が多い。オシムはいま、旧ユーゴスラビア・リーグの再構築を呼びかけているという。

 バルカン半島への長い旅にひとまずピリオドを打った著者の目は自らの足元、日本の少数民族の存在に向けられている。今週発売の週刊誌「アエラ」の「現代の肖像」では、川崎フロンターレ所属で北朝鮮代表の鄭大世の横顔に迫った。木村元彦氏の今後の仕事が楽しみだ。

(芳地隆之)

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