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日めくり編集メモ 010

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2日から新橋演舞場で七月大歌舞伎が始まりました。芝翫さん、富十郎さんの両人間国宝が並び、吉右衛門さんほか役者もそろった今回の芝居ですが、この夜の部、『暫(しばらく)』で鎌倉権五郎景政を7年ぶりに勤めるのは、市川團十郎さんです。

團十郎さんは実に大らかな人柄で、こんな逸話があります。海老蔵時代の1982年のアメリカ公演中、両替するのに「セン・ダラーズ」を連発して周囲を腰砕けにさせたり、その公演終了後、すべてを荷造りしてしまって帰りに着る服がなかったり。大真面目だからこそのポカなので、ここが周囲に愛される所以でもあります。

しかし演技の面では、芸が無造作である、口跡が悪いなどいろいろと注文をつけられました。1985年に12代目團十郎を襲名するときも、叔父の2代目松緑さんに「襲名が近づくにつれても芸が一向に向上しない」などと言われましたが、襲名後は芸格も断然大きくなり、市川宗家の総帥としての風格が出てきました。

2004年、息子の11代目海老蔵襲名公演中に白血病を発病。いったん治癒しますが再発などもあり、健康面には不安があります。とはいえそこは役者。いったん舞台に立てば、病気も逃げ出すのではという貫禄です。また病後、芸がまろやかになったような気もします。さらに最近では海外公演にも力を入れています。

今回演じる「暫」は市川宗家に伝わる歌舞伎十八番のひとつ。構成も奇抜ですし、歌舞伎ならではの美しさもあります。荒事の古劇ですが、文句なしに楽しめる舞台です。50キロ以上ある重さと独特の形の衣装は、一部で「ガンダム」と呼ばれているそうですよ。

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