百貨店は、多種多様なほかの量販店に押されて苦戦が続いているようです。しかし、普通の品物があの美しい包装紙に包まれると輝いてみえるのも確か。今回はそんな包装紙のデザインの話です。
有名なのが三越の「華ひらく」。洋画家の猪熊弦一郎が海岸の石を見て、波にも負けない強さに感銘してデザインしたそうです。1950年から使われ、ローマ字筆記体が入ったのはその7年後。このレタリングはアンパンマンでおなじみのやなせたかしさんの手によるものです。また、高島屋のバラは1952年からで、イメージアップと当時の社長が好きだったことで採用されました。リース型のバラの絵はやはり洋画家で、高島屋に在籍した高岡徳太郎が描いたそうです。
ほかの百貨店も、意外な大物を起用しています。京王百貨店は1964年の創業時から変わっていませんが、手がけたのは、映画「悲しみよこんにちは」や「ウエスト・サイド物語」のタイトルデザインで有名なソール・バス。かつては東京の上野などにも店舗を構えていましたが、現在は水戸にある京成百貨店は日本画家の東山魁夷デザインです。松坂屋はカトレアをシンボルフラワーとして1962年から使っています。大丸は、かつては赤と青の幾何学的なラインがあしらわれたものでしたが、1983年からはシンボルの孔雀の羽をモチーフに、青と緑のストライプ。マイナーチェンジしながら使い続けるのは、百貨店への「安心感」を育むためでしょうか。
がらりと変えるところもあります。松屋は原研哉さんによって、2001年からそれまでのコーポレートカラーだった青を白に変えました。西武百貨店は1959年からの包装紙を、スウェーデンの陶芸デザインの巨匠であるスティグ・リンドベリに依頼。魚、こけし、ミシンなどがぎっしりと並んだその意匠は今見ても独特です。その後1975年からは、西武流通グループのクリエイティブディレクターとなった田中一光さんによる青と緑の円というシンプルなものになり、イメージを一新しました。
ともあれ、百貨店の包装紙は品質保証の印でもあります。持っているだけでその店の宣伝マンになってしまうように、そのブランド力はまだ健在。そのイメージを体現化したものが包装紙といえるでしょう。