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日めくり編集メモ 021

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この夏、沖縄では漫画に関する大きな展覧会が2つ開かれています。1つは沖縄県立美術館での「「沖縄マンガ」展」829日まで)、もう1つは浦添市美術館での「手塚治虫展 未来と平和のメッセージ」822日まで)です。

2007年、那覇新都心に開館した沖縄県立美術館ですが、漫画の展覧会は初めてです。沖縄は多くの漫画家を輩出しています。有名なところでは、砂川しげひさ(『寄らば斬るド』『ワガハイ』)、なかいま強(『わたるがぴゅん!』)、田名俊信(『蔵の宿』)、山咲トオル(『戦慄!!タコ少女』)、仲宗根みいこ(『ホテル・ハイビスカス』)、島袋光年(『世紀末リーダー伝たけし!』『トリコ』)、山原義人(『龍狼伝』)などが挙げられるでしょうか。片や沖縄にこだわり続ける漫画家、新里堅進、比嘉慂、大城ゆかなどが確固とした地位を築いています。ほかにも県外作家によって取り上げられる"被写体"としての沖縄も展示材料です。また、漫画とコンテンツ産業についてのシンポジウムやコスプレ・アニメソングのパフォーマンスなど多彩な催しもあります。

 

一方、漆芸専門美術館として有名な浦添市美術館での「手塚治虫展」は、漫画の巨人の歩みを押さえながらも、手塚による"被写体"としての沖縄に光を当てています。例えば『海の姉弟』。漁師として暮らす姉弟だが、米兵の落とし子だったため村八分のようになっていた。姉はヤマトンチュと恋に落ちるが、実は海を埋めるリゾート業者。甘言に気づき工事を止めようとした姉は命を落とし、弟は怒りに震える――。また例えば『イエローダスト』。ベトナム戦争に行かされた沖縄の軍雇用員が米軍人の子供を人質に籠城するが、その際に持ち出した軍用食には闘争心をむき出しにする麻薬が入っていた。それを食べた子供は軍雇用員を殺害し、そして――。手塚の不遇の時代ということでともに暗い作品ですが、自然保護の思いや戦争への嫌悪が強く感じられます。

 

どちらも、あまり考えずとも充分楽しめるでしょうが、沖縄という"磁場"の漫画状況を概観するのにも、大いに役立ちそうです。

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