先日の本欄で、アサガオについての文章を掲載しました。その後、アサガオについての文献を調べていると、「アサガオ」はかつて、いまのアサガオではない植物の名前だったようです。
萩の花 尾花葛花 なでしこが花 をみなえし また藤袴 朝顔が花
アサガオは、現在のアサガオのほか、キキョウ、ムクゲなどを「アサガオ」と呼んだようですが、万葉集にある山上憶良のこの歌で歌われているアサガオは、キキョウのことだと言われています。
しかし、このような例もあります。
朝顔は 朝露負ひて咲くといへど 夕影にこそ 咲き増さりけれ
ここに出てくるのは、昼も咲いているヒルガオ科のノアサガオではないかと思われます。万葉集には「アサガオ」を歌いこんだ歌が5首あるそうですが、それぞれ何を指すのか、諸説あるようです。
もとは「わが園へいざ帰りなんあさがほの一花桜花散りにけり」(宇多院物名歌合)のように、朝に美しく咲いた花の様子を指す言葉でした。最初はキキョウの名前でしたが、輸入されたムクゲが美しかったのでその名を奪い、その後の輸入植物であるアサガオがさらに奪った、ということになるようです。とすると今のアサガオは3代目ということなのですね。
(参考文献:『新編日本古典文学全集 萬葉集1-4』小学館、『岩波古語辞典』岩波書店)