(注)中学のときに"体験"した漫才ブーム以来、お笑い芸人は全てリスペクトの対象なので、年上もしくは年齢の近い芸人には、基本的に敬称をつけてしまう。
今から約15年前のこと。主に音楽の情報を扱う雑誌の編集部にいた私は、ある連載企画のために、明石家さんまさんがパーソナリティを務めるラジオ番組の生放送を毎回取材していました。番組は週1回、月曜深夜の放送で約2時間。透明な巨大ガラスの向こうのブースの中で、さんまさんはアシスタントの女性を相手に毎回喋りっぱなしでした。
テレビなどで後輩芸人が「さんま師匠は、楽屋も本番も一緒(で、ずっと喋っている)」なんて話していたのを耳にしたことがありましたが、私が見たさんまさんも、まさにそのとおりでした。
だいたい本番30分ぐらい前になると、スタジオの十数メートル向こうから声が聞こえてきて、「あ、さんまさんがスタジオ入りした」と分かります。そこには、マネージャーやらスタッフにいつも陽気に話しかけるれさんまさんの姿がありました。
でも、明らかにその日のさんまさんは不機嫌でした。スタジオ控え室に入ってきたときから無口で(無口なさんまさんを見たのは、後にも先にもそのときだけ)、ふだんよりもさらに多くのタバコを次々と吸っているような感じでした。
「うわー、なんかヤバイな」、そんなことをその場にいたスタッフたちは思ったはずですが、そういうときにかぎってヤバイことは本当に起きるもので......。(続く)