日米関係から世界における日本の在り方まで積極的に発言している寺島実郎氏が以前、日本の極端な対米依存の歴史的要因として、日英同盟と日米安保の成功体験を挙げたことがあります。
前者は1902年に締結されたもので、当時の日本人は「世界の列強の仲間入りをした」と大喜びしました。日英同盟により、日本はその後の日露戦争を有利に進めることができたし、第1次世界大戦では連合国の側、すなわち戦勝国となりました。
後者は戦後です。「アメリカの核の傘の下」という安全保障の考えの下、経済活動に注力したおかげで、日本はアメリカと肩を並べるまでの経済大国となりました。
このように「20世紀におけるアングロサクソンとの同盟が成功をもたらした」という意識が日本のエスタブリッシュメントには強い(第2次世界大戦ではドイツと組んで敗北を喫しましたし)。そのため日本は、冷戦構造が終わり、世界が多極化へ向かう現在でも、過去のサクセスストーリーから脱することができないでいる――寺島氏の論はそんな趣旨だったと思います。
しかし、日英同盟の締結の背景には、軍事大国ロシアを日本にけん制させようとする英国の意図があったし、日米安保は日本人に中国やロシアに対する過剰な敵愾心を植え付け、それはいまも根強く残っている。
外交だけでなく、私たち、とくに40代以上の高度経済成長を知る世代の生活意識にも同じようなところがあると思います。「明日は今日よりもよくなる」と思えた時代は、わずか20年足らず。現代史のなかでも特殊な時代といえる。にもかかわらず、私たちが経済成長を語るとき、1960年代?1980年代を念頭に置きがちです。しかし、将来の日本が、あのころと同じ経験をすることはないでしょう。
「時代は変わった」と認識しない限り、私たちが日々の不安感から解放されることはないのではないか。
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