クレージーキャッツのメンバー、谷啓さんが11日急逝されました。谷さんといえば、NHK『美の壺』のナビゲーターを務めたり、『ざわざわ森のがんこちゃん』の主題歌を歌っていたりと、最近もテレビで拝見・拝聴していたのに、本当に残念です。
谷さんは中央大学在学中、「原信夫とシャープス&フラッツ」に既に在籍していましたが、自身の志向であるスパイク・ジョーンズ・スタイルのコミカルな「フランキー堺とシティ・スリッカーズ」ヘ。その頃、映画俳優のダニー・ケイから芸名を「谷敬」としますが、ファンから「谷底で敬っていては、ずっと底にいることになる」と言われて「谷啓」と変えました。同僚には植木等さんがいたそのバンドですが、渡辺プロの渡邊晋さんからの誘いもあり、2人はさらに面白いことができるバンド「ハナ肇とクレージーキャッツ」に参加することになります。
谷さんは本職のトロンボーンはもちろんですが、ヨーデルのほか、ノドを使ったおかしな歌唱法が出来たり(「愛してタムレ」)、好きな怪奇・恐怖映画からコントを考えたりと実に才人でした。『シャボン玉ホリデー』だと「コントは楽し!ピーナッツ」など2本を台本作家として務めています。また、映画『クレージーだよ奇想天外』でも、走行中にどんどん壊れていく自動車を考え、それを操作している姿を見ることが出来ます。最後にはハンドルだけを持った谷さんが自分の足で走っていて大笑いです。
有名なギャグ「ガチョーン」の始まりですが、中尾ミエさんとのコントで、谷さんが「魚釣りに行って、こんなデカい魚がガチョーンって食いついてきたんだ」と言ったその言葉を、放送作家の塚田茂さんが面白がって使い出したとのこと。そのうち、周りの人々が「ハラホロヒレハレ」と大コケし、テレビカメラもズームイン・ズームアウトを繰り返すことで、「ガチョーン」の形が完成したのですね。謹んで谷啓さんのご冥福をお祈りします。
(参考文献:五分一勇『シャボン玉ホリデー スターダストを、もう一度』日本テレビ)