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日めくり編集メモ 040

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「ダブる」「ミスる」「トラブる」...。ふだん何気なく使っている言葉でも、外来語が動詞化してひろまったものが意外とあります。

おじさんは覚え書きを「メモる」。若い女性は携帯電話を「デコる」。コンピュータを使って「ググる」。皆あわてて「パニクる」...。考え出すとこの手の言葉は相当ありますね。だからと言って「〜る」をつければすべて動詞になるわけではなく、例えば「ゲット(get)」は「ゲットする」で、「ゲトる」にならないのが面白いところです。

この始まりは「サボる」。フランス語のサボタージュ(sabotage)、すなわち怠業です。1919年9月、神戸の川崎造船所の職工1万6千人が賃上げを要求し、サボタージュ戦術で使用者側と対決しました。結果は労働者側が勝利し、8時間労働制を勝ち得ました。この争議について、大阪朝日新聞の社説が「サボタージュ」という言葉を使ったところ、流行したそうです。

当時は労働運動の萌芽期。前年には米騒動が起き、世情は騒然としていました。争議も頻発する中で、「サボタージュ」「サボる」という言葉が時代にマッチしたのでしょう。「デコる」も「ググる」も、言葉の誕生は時代の要請なのかもしれません。ちなみに「サボ」は木靴の意味で、「アージュ」という動作を表す接辞を合体することで、木靴を履いているようにのろのろ働く、すなわち「怠業」となったのです。
(参考文献:暉峻康隆『すらんぐ〈卑語〉』光文社、『近代日本総合年表』岩波書店)

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