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日めくり編集メモ 049

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岩手県南部に位置する北上市は人口9万人。夏油(げとう)温泉が有名とはいえ、のどかな東北のありふれた町のようです。しかし、この市は名だたる文学館を2つ擁しています。

ひとつは北上線柳原駅すぐにある「日本現代詩歌文学館」。作家井上靖が「詩専門の文学館をつくりたい」と奔走し、1990年に開館しました。井上は初代名誉館長になります。設立精神は「日本の詩歌の長い歴史を尊重しつつ、いま次世代に何を残せるのかを絶えず問いかけよう」。来年3月まで記念展「一握の砂 刊行100年―啄木に献ずる詩歌」が開かれています。

もうひとつは北上川沿いの公園・展勝地にある「サトウハチロー記念館」。ハチローの詩は数多く、童謡「お山の杉の子」「うれしいひなまつり」からザ・フォーク・クルセダーズの「悲しくてやりきれない」まで、今でも愛唱されています。没後、長年住んだ文京区ではなく深いゆかりもない北上市に建設したのには、いろいろと悶着があったからだそうですが、1996年の開館以来すっかり当地に馴染んでいます。

岩手県には、花巻市の「宮澤賢治記念館」「高村光太郎記念館」、盛岡市玉山区(旧玉山村)の「石川啄木記念館」、紫波町の「野村胡堂・あらえびす記念館」、奥州市の「菊田一夫記念館」とずらり。読書の秋、芸術の秋。文学や音楽、演劇好きには堪らない県だと言えそうです。
(参考文献:東京新聞・中日新聞文化部『文学館のある旅103』集英社新書)

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