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日めくり編集メモ 050

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江戸時代末期の血みどろな芝居絵、というと腰が引けてしまうかもしれませんが、その土俗的な迫力ある絵は妖しい魅力にあふれています。高知県では「えきんさん」として有名な絵師金蔵(弘瀬金蔵)の手によるものです。

絵金は1812年、高知城下に髪結いの子として生まれました。子供の頃から画才があり、18歳で江戸に上って狩野派本格を学びます。21歳で帰国し土佐藩家老桐間氏の御用絵師となりました。しかし贋作事件を起こして身分剥奪されてしまいます。この事件は、彼の才能をねたんだ者の罠という説もありますが、詳しいことは分かっていません。苦難と放浪の末、赤岡(現香南市赤岡町)に定住して町の絵師金蔵として風俗画、芝居絵、絵馬、屏風絵などを描きます。

 

農漁民に愛された、おどろおどろしく粘着的な画風は、見るものを釘付けにせずにはいられません。1876年、絵金は65歳で没しますが、その後も赤岡の人々は個人や地区ぐるみで所有し、現在まで「赤岡の宝」として大切にしています。毎年7月には「絵金祭り」も開催され、蝋燭の炎をかざして見るその絵は、いよいよ妖しさを増します。この赤岡町には「絵金蔵」、同じ香南市の香我美町には「絵金資料館」があり、祭りのとき以外にも親しむことができます。

 

先月、熊本市現代美術館に絵金の屏風絵を貸し出したところ、誤ったかたちで燻蒸されて著しく変色してしまいました。長年大事にしてきた赤岡の人々の落胆はいかばかりでしょうか。高知新聞では「絵金屏風絵変色問題」のページをつくるほどです。二度とこのようなことのないよう、徹底した検証が求められています。

(参考文献:高知県立美術館ミュージアムショップ 絵金に関するページ絵金蔵公式サイト

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