映画『戦場にかける橋』で有名な泰緬(たいめん)鉄道は、タイとミャンマー(ビルマ)を結ぶ鉄道です。すなわち「泰」はタイ、「緬」はミャンマーのことです。このように日本では、外国の国名・地名を漢字で表すことはご承知の通りです。
日本は長く中国から文化を輸入してきましたから、漢字表記もその影響なのですね。現在最も使うのはアメリカの「米」でしょうか。「亜米利加」の米ですが、中国では「美利堅」なので「美国」です。粉や波止場のメリケンとはこのことです。フランスは、日本では「仏」で中国では「法」、同じようにドイツは「独」と「徳」といった調子で、日本と中国では少々漢字が違います。
当然同じものもあって、ポルトガルの「葡萄牙」、インドの「印度」、メキシコの「墨西哥」、スペインの「西班牙」など。日本との関係で「日葡」「日印」などとは使いますが、「日墨」「日西」ではちょっと分かりづらいかもしれません。ロシアの表記を「露」「ロ」と違えている新聞もありますが、おそらく帝政ロシアと現在のロシアを区別しているのでしょう。
かつてニュージーランドが、オーストラリアには「豪(濠)」という漢字があるのだからとして、「乳」を自国の漢字表記にしようとしたことがありました。その音と乳製品のイメージから考えたのでしょうが、残念ながらまったく定着しておりません。漢字表記は「新西蘭」ですが、新聞の見出しでは大抵「NZ」が使われているようです。
(参考文献:長澤規矩也編『携帯新漢和中辞典』三省堂)