マガ9editor's room

マガ9編集部発の情報やスタッフが書いたコラムを随時お届けします。

日めくり編集メモ 083

| トラックバック(0)

大阪の大丸心斎橋店北館は、昨年8月までそごう心斎橋本店でした。老舗のそごうがライバルの大丸に本店を売り渡すと聞いたときは本当に驚いたものです。さて、この屋上には庭園があり、歴史的な彫刻も見ることが出来ます。

彫刻のタイトルは「飛躍」。作は藤川勇造です。藤川は1883年香川県生まれ。大伯父は讃岐漆芸の祖・玉楮象谷(たまかじ・ぞうこく)です。東京美術学校を卒業後パリへ留学し、晩年のオーギュスト・ロダンの助手を務めました。帰国してからは二科会彫塑部を主宰し、後進の育成に努めましたが1935年、51歳の若さで亡くなりました。日本の近代彫刻に大きな影響を与え、その作風は静謐な中にも力強さが感じられる自然主義的なものです。

 

さてこの彫刻は旧そごう大阪店の御堂筋側外壁に飾られていました。そごう大阪店は藤川が死去した1935年竣工。村野藤吾設計のアールデコ様式建築は、ヴォーリズ設計の重厚な大丸と好対照で、心斎橋の名物でした。2003年の解体の際には反対運動も起きたほどです。2005年、取り壊した跡に新しいそごう心斎橋本店が建ち、「飛躍」も屋上に移設されましたが、そのわずか4年後にそごうは約380億円でこの店を大丸に売却することになりました。

 

いま大阪では百貨店競争が激化しています。各店とも生き残りをかけて増床、改装にしのぎを削り、さらに新規出店する百貨店も。売り上げ減少が続く大阪での体力消耗戦に、共倒れを懸念する声さえ上がっています。そんな競争をよそに、大丸心斎橋店北館の屋上庭園にはオリーブとオレンジの木が茂り、美しい彫刻とともに緑が都会にいることを忘れさせてくれます。それは、かつて百貨店が文化を担った時代の残り香のようです。

(参考資料:そごうホームページ大丸心斎橋店ホームページ

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://daily.magazine9.jp/mt/mt-tb.cgi/357