「マガ9」では、毎月、月代わりで「選書」を紹介しています。
12月は、何かと贈り物の機会のおおい月。私もこの時期は、甥や姪へクリスマスプレゼントやお年玉代わりに
「本」をプレゼントすることにしています。本屋へ行って選ぶのもなかなか楽しいのですが、
どうもかつて、自分が読んだ本ばかり選んでいます。ということで、児童文学評論家の野上暁さんに選んでもらいました。
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もうすぐクリスマス、そして1週間後にはお正月を迎えます。お子さんへのプレゼントに、大人が読んでも楽しめる、季節感のある本や、戦争と平和を考えるきっかけになる絵本などを紹介します。
『さむがりやのサンタ』レイモンド・ブリッグズ作/すがはらひろくに訳(福音館書店)12月24日になると、「やれやれまたクリスマスか」なんて起きてきて、北国に住んでいるのに寒さが苦手なサンタさん。『ゆきだるま』や、核の恐怖を描いた『風が吹くとき』の作者による傑作絵本です。 | 『くるぞくるぞ』内田麟太郎・文/長新太・絵(童心社)大雪が降り続いた後、森の動物たちがあまりの寒さに穴倉で丸くなっていると、「ズシーン!」と森が地面ごと持ち上がったのでびっくり。動物たちは大怪獣の仕業だなどといいながら、「くるぞくるぞ」と、一斉に逃げ出します。さて、その正体は? | 『じゅうにしものがたり』瀬川康男・作(グランママ社)神さまが、一年の最初の日に来たものから順に、名誉の仕事を与えるというおふれを出しました。それで動物たちの先陣争いが始まります。十二支物語をユーモラスに紹介した、新年を祝うのにふさわしい、絢爛豪華で祝祭的な絵本です。 |
『ここが家だ─ベンシャーンの第五福竜丸』ベンシャーン・絵/アーサー・ビナード・構成・文(集英社)1954年、ビキニ環礁で、アメリカの水爆実験によって被爆した、マグロ漁船・第五福竜丸の悲劇を描いた絵本です。リトアニア生まれの20世紀アメリカ美術の巨匠が描き続けた作品をもとに、アメリカ生まれの詩人が、核根絶の願いを込めて構成した一冊です。 | 『戦争なんて、もうやめて』佐藤真紀・日本国際ボランティアセンター・編(大月書店)パレスチナ、イスラエル、イラク、北朝鮮などの子どもたちの絵とメッセージで構成されたユニークな絵本です。平和を願う子どもたちの絵とメッセージが素晴らしく、読む人たちの心をとらえます。 | 『せかいいちうつくしいぼくの村』小林豊・作(ポプラ社)内戦や爆撃により国土が荒廃し、政治的混乱が今も続いているアフガニスタン。戦火に見舞われる前の、豊かで美しい村の光景と人々の暮らしが描かれ、戦争によるその破壊と喪失を、静かに訴えかけてくるようです。 |
『なぜ戦争はよくないか』アリス・ウォーカー・文/ステファーノ・ヴィタール・絵/長田弘・訳(偕成社)人間ばかりか、地球全体をむしばみ、破壊してしまう戦争の恐ろしさを、象徴的な場面をはさみながら、優しい言葉で語りかけられます。戦争はなぜいけないのかを、深く考えさせる、画期的な絵本です。 | 『ひつじがいっぴき』木坂涼・詩/長谷川義史・絵動物を描いた詩ばかりが31編。「ねむれないとき ひつじをかぞえる ひつじがいっぴき ひつじがにひき ひつじがさんびき ひつじがかぜひき」そして、「ひつじがゆきかき ひつじがしりかき ひつじがいびき」なんて続くので笑っちゃいます。 | 『子ども・大人』文・野上暁+ひこ・田中/絵・ヨシタケシンスケ(大月書店)最後に紹介するのは、筆者が編集委員の「考える絵本」シリーズの中の一冊です。子どもは大人になれるけど、大人は子どもに戻れません。1回こっきりの子ども時代を、しっかり楽しんで欲しいいう願いを込めて作りました。 |