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日めくり編集メモ 099

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民謡というと、どうしても高齢者層のものと思われがちです。しかし、昨年10月の日本郷土民謡協会主催の全国大会では北海道23歳の女性がグランプリ優勝し、インターネット上では「美人すぎる民謡歌手」として話題になりました。

民謡は近代の言葉で、それまでは俚謡(りよう)などと称されていました。神への祈りや労働歌から始まり、浄瑠璃や説経節、遊芸人の影響といった雑多な要素が融合して現在の民謡となったのです。柳田國男は田歌、庭歌、山歌、海歌、業歌、道歌、祝(ほぎ)歌、祭歌、遊歌、童歌の10種類に分類しています。明治以降、洋楽の普及で衰退しましたが、大正期に中山晋平や北原白秋の新民謡運動で「ちゃっきり節」なども作られるようになりました。

 

戦後のブームは、懐かしい故郷の旋律が、都会で働く人々に心地よく響いたのでしょう。放送番組でいえばフジテレビの「キンカン素人民謡名人戦」なども有名。1970年代後半のブームは原田直之さん、金沢明子さん司会のNHK「民謡をあなたに」や、1978年から92年まで放送された日本テレビ「輝け!日本民謡大賞」によって起こりました。ことに後者は日本民謡協会などが参加する大きなもので、プロ歌手も出場可能とした民謡界最大の権威だったとのことです。

 

その後、民謡は長い低迷期に入りますが、このところ復活の兆しが見えてきました。「月刊カラオケファン」を発行するミューズでは、昨年の11月に「みんよう倶楽部」を創刊。また、東北6県では秋田テレビ制作の「クボタ民謡お国めぐり」、沖縄ではラジオ番組「民謡で今日拝(ちゅううが)なびら」(RBCiラジオ)、「民謡の花束」(ラジオ沖縄)が放送され、安定した人気を誇っています。これらの地域では、もはや「ブーム」といった一過性のものではないのでしょうね。

(参考資料:『国史大辞典』吉川弘文館、古茂田信男・島田芳文・矢沢寛・横沢千秋編『新版日本流行歌史 下』社会思想社、苫小牧民報20101028日付「【白老】八木美穂さんが郷土民謡グランプリ」、琉球新報20101224日付 小浜司「島唄を歩く」16曲目」)

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