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日めくり編集メモ 107

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ピクトグラムということばをご存じですか。例えば、抽象的な人形が逃げようとしている非常口の緑色の表示。こういった、言葉が通じなくても分かるような絵文字で表示した視覚記号のことです。

ピクトグラムは、原則として学習せずに分かるように、意味するものの形でその意味概念を理解させるものです。ですから同じグラフィックシンボルでも、数学記号の+、-、×÷や、ミシュランの星印はピクトグラムではありません。エジプトのヒエログリフや中国の甲骨文字は、物の形を描いてその意味を伝えるものでしたが、これは歴史を経るにつれて象形性が薄まり、抽象化されて、言語を表記する文字に変化していきました。

 

文字が特権階級のものになってしまったのち、読めない人たちに分からせるようにした例は、商店で扱う物の形をシンボリックにデザインした江戸時代の看板が挙げられます。キセルやノコギリ、かつらはそのままの形で、お茶屋や飴屋には壺、両替屋には分銅の形の看板が店頭に取り付けられていました。また、現代なら方向を表すのに矢印を使いますが、この時代では指で指し示した手の形。これも老若男女、言語を超えたピクトグラムといえるでしょう。

 

指印が示すように、交通に関しての共通言語としてのピクトグラムは早くから導入されていました。中でも、違う言語圏の隣り合ったヨーロッパでは自動車の普及とともに共通の道路標識が必要となり、1909年に危険を表す4つの標識が決められ、さらにその後数度にわたり規格化されました。1949年に「ジュネーブ・プロトコル」が国連で採択、誰でも見るだけで分かる表示が勧告され、欧州各国はもとより、東京オリンピックを控えた日本も1963年、これに続いたのです。(108に続く)

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