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日めくり編集メモ 118

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東日本大震災で壊滅的な被害を受けた福島県南相馬市。ここの小高区(旧小高町)の浮舟文化会館内に「埴谷島尾記念文学資料館」という小さな文学館がありました。入り口に「《精神のリレー》のためのバトンタッチゾーン」と刻まれています。

その名の通り、埴谷雄高(本名:般若豊、1909-1997年)と島尾敏雄(1917-1986年)の文学館。ともに戦後文学を担った中核であり、思想家としても戦後社会をリードしました。いわゆる「文学館」という施設には似つかわしくないようですが、埴谷、つまり般若家のルーツと、島尾敏雄の両親の出身がともに小高町だということでこの地に建てられたようです。

 

この小高町と、原町市鹿島町12町が2006年に合併してできたのが南相馬市。東北6大祭りのひとつで重要無形民俗文化財の相馬野馬追でも知られる、福島県浜通り北部の中心都市です。しかし周辺はのどかな田園地帯ですから、社会に異を激しく唱えたこの2人がこの地にゆかりがあると言われても、少々疑問に思うほどです。

 

しかし、2人にまつわる貴重な資料や蔵書はどうなってしまったのでしょう。今は混乱の極みですが、被災している方々を何よりもまず優先し、その後に文学館の再建を果たして欲しいと思います。前述の《精神のリレー》とは、深い思索を前世代から受け継ぎ、次世代に手渡していくという埴谷の言葉です。同時にこの大災害の教訓も次世代へ渡さなければ。

(参考資料:相馬市ホームページ埴谷島尾記念文学資料館ホームページ、東京新聞・中日新聞文化部『文学館のある旅103』集英社新書)

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