2月に始まった反政府デモが急速に拡大し、「内乱状態」とも伝えられるリビア。人々を立ち上がらせたものは何だったのか、状況は今後、どうなっていくのか。日本生まれリビア育ちのアーデル・スレイマンさんへのインタビュー、サイトで公開した<前編>に続き、後編をブログで先行公開します。
前編はこちらからお読みください。→http://www.magazine9.jp/other/libya/
■「内戦」はさらに長引き、激化する?
僕自身は、個人的には「独裁」が必ずしも――特にリビアにとっては――悪いわけではないと思っています。でも、革命当時のカダフィは確かにカリスマだっただろうけれど、独裁は長く続けば必ず腐敗する。経済状況などを考えても、カダフィの存在はやはり今のリビアにとってマイナスだと感じていました。何とかして、リビアは今後変わらなきゃいけないだろう、という思いはあったんです。
でも、最初に反政府デモのニュースを聞いたときは、複雑な気持ちになりました。チュニジアやエジプトと違って、リビアの軍隊は即座に市民に向けて実弾を発砲するからです。2005年の「2・17」も含め、反政府の動きに関してはいつもそうだったし、今回もやはりそうだった。争いが拡大する中で、最近では外国からの傭兵が投入されているとも言われていますよね。そんな状況下で、国民がいまさら政府に従うわけはないと思うし、でもこれ以上犠牲は出てほしくないし、だけど国民の要求は実現されてほしいし...とても複雑な思いがあります。
エジプトなどでは大統領が国外脱出の道を選びましたけど、カダフィについてはその可能性は低いのではないかと思います。リビアからは絶対に出て行かず、徹底して戦う、逃げるよりはリビアで死ぬ方を選ぶのではないか。そう考えると、戦闘はさらに長引いて、激しくなっていく可能性が高いし、政府側だけでなく反政府側も武装している今の状態は、もうすでに「内戦」と言えるかもしれません。
そして、その結果としてはいろんな可能性が考えられます。例えば反政府側が掌握している東部だけが独立して、トリポリを含む西部はそのままカダフィの政権下に残る、といった可能性もゼロではないでしょう。ただ、その場合ももちろん東部が以前のリビアに戻るというのではなく、徹底的に反政府勢力が弾圧される、恐怖政治の時代という最悪の状況になるでしょうが...。(2へ続く)