去る4月7日は鉄腕アトムの誕生日でした。アトムという名前ですから、原子力エネルギーを動力源としているのですが、この作品のヒットゆえに「アトム=原子力」は未来の希望のエネルギーだと錯覚を与えてしまった部分があることは想像に難くありません。
鉄腕アトムは言わずと知れた手塚治虫の作品ですが、この誕生日は、連載が開始された「少年」(光文社)1952年4月号の発売日がこの日であることから。もとは、その前年の「アトム大使」という作品の一キャラクターでしたが、評判がよかったことから主役に抜擢されました。その後1963年から日本初のテレビアニメとなったのはご承知の通りです。
1978年に「鉄腕アトム よみがえるジャングルの歌声」という原発PR漫画が発行されましたが、これは手塚のほぼ関知しないところで作成されたようです。この中で、手塚の筆致とは違うアトムは「安全」を繰り返すばかり。これによって広瀬隆さんの『東京に原発を!』(JICC出版局)では、手塚は糾弾されました(集英社文庫版ではこの記述はなくなっています)。
しかし、手塚は反核の立場を明確にし、アトムを核融合エネルギーの産物であるとしています。アトムが空を飛びながら下で反核運動をしている人に「ぼくも放射能灰まいているのかなあ」と悲しんでいる漫画も描いているそうです。漫画の巨人・手塚治虫ですら対応に苦慮した原子力発電、PRのための漫画界への食い込みは凄まじいものがあったようです。
(参考資料:「COMIC BOX」1988年8月号、1990年1月号)