城南信用金庫が先日「原発に頼らない安心できる社会へ」という脱原発に向けた理事長メッセージを発表し、注目を集めています。この信金の経営理念として、3代目理事長を務めた小原鐵五郎の、哲学ならぬ「小原鐵学」があります。
城南信金は、2010年度の決算(3月末の速報値)で純利益は68億円、自己資本比率は12.07%と高い水準を維持しています。東京と神奈川に支店網を展開し、業界では預金量、貸出金量ともに日本第2の規模を誇ります。中小企業や庶民を相手の金融をする信金ですが、地方銀行中位行に匹敵するほどです。城南信金がここまで大きくなったのには、先述の小原鐵五郎と、「小原鐵学」を抜きには語れません。
信金のドンと呼ばれた小原は1899年生まれ。19歳のときに米騒動を見て、貧富の差のない社会を作りたいと翌年大崎信用組合に入りました。頭角を現し、1927年の金融恐慌時にも引き出しを無制限にして信用を高め、終戦直前、東京・城南地区15の信用組合を合併させた「城南信用組合」の専務理事に就任。1951年「城南信用金庫」に改組し、信用金庫業界団体の理事長・会長を務めるなど生涯をその発展に尽くしました。
彼の「小原鐵学」には、「貸すも親切、貸さぬも親切」「カードは麻薬」「人柄に貸せ」など名言が多々あります。なかでも「大企業という富士の頂上に対して中小企業はそれを支える裾野。信用金庫はそのためのものだ」という「裾野金融論」は有名です。地域の生活に根ざしたからこその脱原発の意思表明だと思いますが、大きな反響を起こしました。城南信金に続く金融機関や企業の出現が待たれます。
(参考資料:小原鐵五郎『この道わが道―信用金庫ひと筋に生きて』東京新聞出版局、東京新聞特報面2011年4月20日付)