震災前の2月12日、多摩美術大学教授の片山雅博さんが亡くなりました。まだ56歳の若さでした。片山さんの功績は、作家として、裏方として、教授として、様々なアプローチでアニメーション業界の発展に貢献したことです。
片山さんは1955年生まれ。8歳のとき、テレビアニメ『鉄腕アトム』にカルチャーショックを受け、漫画・アニメの分野を志します。『オバケのQ太郎』に登場する小池さんのモデルとして有名な鈴木伸一さんに師事。その後自主制作アニメサークル「グループえびせん」に加入し、のちに会長になります。このサークルは、世界4大アニメ映画祭すべてのグランプリをとった山村浩二さんや、漫画家のふくやまけいこさんも参加していました。
アニメーション作家のほかにイラストレーター、漫画家としても活躍した片山さんでしたが、ほかに日本アニメーション協会と日本漫画家協会の両事務局長、広島国際アニメーションフェスティバル組織委員などを歴任。一匹狼の多い業界で、そのまとめ役を積極的に務めていました。バッジで満艦飾のジャケットを巨体にまとって上映会の司会もこなし、「司会もする漫画家、モノマネもできるイラストレーター」を自任したほど話術は達者でした。
1998年から多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科に招かれ、後進の育成に励み、数多くのアニメ作家を輩出しました。第81回アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞した『つみきのいえ』の加藤久仁生監督も同学科の出身です。アニメーション業界に多大な功績を残して逝ってしまった片山さん。お別れの会は大地震発生の翌日に行われましたが、藤子不二雄Aさん、高畑勲さんをはじめ大勢の人が参列し、片山さんの冥福を祈りました。
(参考資料:アニドウホームページ、『グループえびせん大乱戦伝説豪華愛蔵本』グループえびせん)