異例の5月技量審査場所も横綱白鵬の優勝で終わりました。「八百長問題のみそぎは済んだ」とする向きもいるようですが、揺れた相撲界は7月場所をどうするか、決断を迫られているようです。
相撲の祖は神話に登場する野見宿禰(のみのすくね)と当麻蹴速(たいまのけはや)と言われますが、文献に出てくるのは、642年に百済からの使者をもてなすため建児(こんでい)と呼ばれた兵士を招集して相撲をとらせたとある日本書紀の記述が最初のようです。その後天皇や将軍の天覧・上覧相撲が多く催されました。江戸時代になると大名、公家、大商人が力士のバックとなった江戸、京、大坂でそれぞれ番付が作られ、その人気は庶民にまで広く行き渡りました。
幕末から明治、さらには昭和初期にかけ、相撲界では内紛がしばしば起こっています。東西の組織での争いはもちろんのこと、改革や給金の値上げを訴えての脱退や籠城、果ては別の組織を作ったりしたことも。言ってみればつい最近までのプロレス界の合従連衡のようなものでしょうか。こういった歴史を考えると、今回の八百長騒動もその流れにある気もします。それでも今回ほどの問題となってしまった以上、反省した上で改革の約束を果たしてもらいたいものです。
今場所もNHKの中継はありませんでしたが、日本相撲協会の公式サイトや動画サイト「ニコニコ動画」は大人気。横綱白鵬をはじめとする力士20人は来月4日から被災地に入り、ちゃんこ鍋の炊き出しや写真撮影などで慰問を行うとのことです。相撲は、スポーツであるとともに神事でもあります。大横綱の土俵入りで荒ぶる大地の地霊を鎮めて欲しいと願わずにはいられません。ただ、もう一つの大災害である原発事故は、いかな力士でも対処するのは難しいでしょうが...。
(参考資料:景山忠弘『写真と資料で見る大相撲名鑑』学習研究社)