現在、「コンピュータ監視法案」が衆議院法務委員会で審議中です。31日には採決されるとの情報もありますが、そもそも震災や原発事故の対応に追われる政権が、憲法に保障される国民の権利を侵害しかねない法案を無理に通そうとする理由は何なのでしょうか。
マガジン9では、どん・わんたろうさんのコラムなどで、この法案の危険性について度々発信してきました。閣議決定が「震災後のドサクサ」かそうでないかという、本質とは関係のないところでの議論はありましたが、この法案に関しての報道は低調なまま、法務委員会で審議入りしています。また、こちらのように単なるウィルス作成罪の新設と問題を矮小化させる記事も出回っていますが、この法案は、通信の自由を定めた憲法21条と、捜索の際に場所と物の特定を要請する憲法35条を踏みにじるものとしか考えられません。
問題点は多々ありますが、何よりも、警察が裁判所の令状なしに通信履歴(ログ)の保全要請が出来る点。当人の知らぬところで通信の監視が行われますから、警察が何をやっているかの歯止めはありません。さらに「リモート・アクセス」といわれるデータの差し押さえは包括的なものとなり、あらゆる通信記録が捜査の対象となります。主眼といわれるウィルス作成に関しては、江田法務大臣の答弁によると、無料のプログラムであるフリーソフトウェアにバグがあった場合、ウィルス作成罪に問われる可能性もあるとのことです。
どのようなソフトウェアにもバグは付き物。またフリーソフトウェアの自由な開発と流通は、その発展に寄与してきましたが、その経緯は一顧だにされません。以上の点に関して、日弁連や情報処理学会が会長声明で懸念を表明しています。江田法相は1月、この法案について「お答えできるほどの見識を持っていない」と記者会見で語り失笑されたことがありました。まあ人権派、リベラルといわれた江田氏が、警察国家への道を開くコンピュータ監視法案の主管大臣になっていること自体、戯画にすらならないのですが...。
(参考資料:高木浩光@自宅の日記 2011年5月27日、「コンピューター監視法案」ついに審議入りも、日弁連や民主党内からも懸念、疑問の声が PJニュース 2011年5月26日)