普天間基地返還後の代替施設は、名護市辺野古への移設計画が進められてきましたが、住民の粘り強い反対などで頓挫状態。米上院軍事委員会の重鎮議員が辺野古案を「非現実的」として嘉手納基地への統合を主張し、北澤防衛相があわてて火消しに回るなど混乱が続いています。そんな中、本島最北部の国頭村の、人口170人ほどの集落・安波が「沖縄自動車道の延長」「安波空港建設」などの振興策を条件に代替施設の受け入れを突如目指し始めました。
沖縄民謡の入門曲「安波節」でも知られる同集落ですが、背景には高齢化、過疎化の進展と、農業を中心とした産業基盤の弱さがあります。しかし、一部住民が区外の関係者と連携しての独断的なこの行動は、「結局条件さえ整えば、沖縄は基地を受け入れるんじゃないか」との誤解を与え、結果として「県内移設反対」という県民の総意をないがしろにするものでしかありません。事実、国頭村長は断固反対を表明しており、首長の同意がない以上進展は難しいでしょう。
この混乱は、普天間返還・移設で繰り返されてきた構図です。そして高江の住民にとっても、このことは対岸の火事ではありません。このような計画が実行されては、本島北部が米軍の要塞になってしまいます。折しも米軍が垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間配備方針を発表、7月からは沖縄防衛施設局がヘリパッド建設を再開する可能性が強く、情勢は緊迫しています。震災・原発事故から3カ月。その収拾もままならない中、沖縄も大いに揺れているのです。
(参考資料:社説『「安波移設」私案 住民自治蝕む陰湿な手法』琉球新報2011年5月25日付ほか同紙、『普天間代替 安波推進派が急ぐ背景』沖縄タイムス2011年6月11日付ほか同紙)
コメントする