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日めくり編集メモ 150

「夏がくれば思い出す はるかな尾瀬 遠い空」――「夏の思い出」でも知られる尾瀬国立公園が先月24日、山開きを迎え、福島県檜枝岐村で式典が行われましたが、この土地の約4割は東京電力が保有しています。

6月に入り、ミズバショウも見頃の尾瀬国立公園は群馬県、福島県、新潟県、栃木県にまたがり、広さはおよそ8690ヘクタールで、東京ディズニーランドの約106個分。1890年、平野長蔵が沼尻(ぬじり)に行人小屋を設置したのが尾瀬の開山といわれています。この地域を水没させるダム建設が計画され、長蔵はこれに単身反対しました。死後は子の長英が「長蔵小屋」を引き継ぎ、尾瀬の保護を訴え続けたのです。

1922年、関東水電(現東電)が尾瀬の水利権を獲得し、尾瀬原ダムが計画されました。尾瀬沼からの取水工事が戦争による中断期を挟んで行われますが、1949年にNHKのラジオ歌謡「夏の思い出」(江間章子作詞、中田喜直作曲)がヒットし、その中に歌われた尾瀬の名は全国的に有名になりました。尾瀬が特別天然記念物に指定されたこともあって自然保護意識も高まり、1996年に東電は正式に計画を断念しました。

ごみの持ち帰りや自動車乗入れ制限など皆の努力と運動で、尾瀬は自然を保っています。しかし、原発事故のあおりで東電がこの土地を売り払うのではないかとの不安が高まっています。群馬県知事は絶対阻止を表明していますが、仮に売却するにしても、今までの保護を無にせぬようにしなくてはなりません。何より、東電にはもっと先に手をつけるべき資産があるのではないでしょうか。
(参考資料:尾瀬国立公園 ようこそ尾瀬・サイトへ「東電の尾瀬売却が浮上、群馬知事「絶対に阻止」」読売新聞2011年5月12日付

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