今日7月10日は東京・浅草寺(台東区)の功徳日で「四万六千日(しまんろくせんにち)」。この日1日詣でただけで、そのご利益は46000日(約126年)分ということで多くの人出で賑わいます。また、この縁日に併せて「ほおずき市」も開かれます。
本来観音信仰の縁日は18日ですが、室町時代以降に功徳日が設けられ、この日に参拝すると大変な日数分のご利益が得られると信仰されてきました。特に7月10日の縁日は1000日分と多いのですが、浅草寺では18世紀前半の享保年間の頃から「四万六千日」と呼ばれるようになりました。なぜこの数かというと、「米1升分の米粒の数が46000粒にあたり、一升と一生をかけた」など諸説あるようですが、定説はないそうです。
10日と、この日に早く参拝したい人々が押しかけた前日9日の2日間を「四万六千日」のご縁日として、祈祷を受けた人には黄色い掛紙の「黄札」が授与されます。また、「ほおずき市」も両日立ちますが、こちらはもともと愛宕神社(港区)の縁日で開かれていたとのこと。これも四万六千日と呼んでいたのですが、やがて「四万六千日ならこちらが本家」と浅草寺境内にも「ほおずき市」が立ち、こちらの方が盛大になりました。
この言葉を聞くと思い出すのが、8代目桂文楽。戦後落語の名人といわれた彼が「船徳」を演じる際の台詞、「四万六千日、お暑い盛りでございます」は有名です。この一言によって描き出したのは、真夏のうだるような暑さ。だからこそ、その暑さを避けて船で川を行こうとなる展開が生きるのです。細部を寸分たりともゆるがせにしない噺を聞いていると、夏らしい黒絽の羽織を涼やかに着た落語家の姿が浮かび上がってきます。
(参考資料:あさくさかんのん浅草寺ホームページ、暉峻康隆監修『CDブック完全版八代目桂文楽落語全集』小学館)