電力不足が巷間叫ばれていますが、原子力発電とセットになっているといわれる揚水発電を本格稼動させれば補えるとの指摘もあります。水力発電の一形態である揚水発電とはどのようなものなのでしょうか。
揚水発電は、簡単に言うと夜間に水を揚げ、昼に流して発電するシステム。原発は細かな出力調整が難しいため、夜間には電気が余ってしまいますが、これを使って水を揚げておけば、実質的に蓄電しているようなものです。もとの電力は原発に限る必要はなく、夜間に余剰電力さえあれば稼動できます。1892年、世界最初の揚水発電所がスイス・チューリヒに設けられました。
日本初の揚水発電所は、長野県・野尻湖のほとりにある池尻川発電所(信濃町)。1934年4月、中央電気によって運転が開始され、現在は東北電力の管轄です。ここの珍しい点は下部調整池がなく、川へと放流してしまうこと。一般的な1日周期の揚水・発電サイクルではなく、融雪期や多雨期に揚水し、渇水期に下流の水量を確保することも併せて発電する1年周期のものなのです。
その後、原発が林立していく前段階の1960年代から、純ないし混合の揚水発電所が多く建設されます。原発からの余剰電力対策“だけ”ではないでしょうが、事ここに至っては、電力業界はこれを活用して平日昼のピークに備えなくてはなりません。それにしても東電が揚水発電の活用を渋々言い出したのも4月になってから。地域独占の代償に電力供給の義務があるはずなのですが。
(参考資料:水力ドットコム、「東電がようやく認めた“隠し玉”揚水発電で夏の電力不足解消へ」ダイヤモンド・オンライン、「電力を『捨てる』発電所」よくわかる原子力)