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日めくり編集メモ 164

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来夏、師匠の名でもある「桂文枝」を襲名する人気落語家の桂三枝さん。万年青年のような若々しさですが、彼も68歳。上方の桂一門の留め名を名乗るからには、大変な覚悟があったのだろうと思われます。

三枝さんは1943年生まれ。幼少時に父が戦病死して母子家庭となり、大変苦労したそうです。苦学して関西大学に入学し、出来たばかりの落語研究会・落語大学に入部。「浪漫亭ちっく」の芸名でテレビなどにも出演しました。1966年に桂小文枝(のちの5代目桂文枝)に入門。その翌年には毎日放送ラジオ「歌え! MBSヤングタウン」のディスクジョッキーに抜擢され、関西で人気が沸騰しました。「ヤングおー!おー!」や「パンチDEデート」「新婚さんいらっしゃい!」など出演したテレビ番組は数え切れません。

今はもうない寄席「角座」に三枝さんが初めて出演したとき、まったく笑いが起きず意気消沈。さらにその舞台を悠然と猫が歩き、そちらのほうが大受け。当時はネズミ対策として猫を寄席で飼っていたのです。咄嗟のことでフォローも出来ず、しどろもどろのまま楽屋へ戻り、しょげていた三枝さんを、寄席で働いていたお茶子さんが「初舞台で猫が歩いた芸人さんは、みんな出世してはんねんで」と励ましてくれました。それはお茶子さんの嘘だったそうですが、その言葉を信じて芸道を精進してきたのでしょう。

本業である落語にも力を入れ、2003年からは上方落語協会会長を務め、2006年には「天満天神繁昌亭」を開席しました。現在三枝さんが住む大阪府池田市は、「池田の猪買い」や「牛ほめ」など古典落語の舞台です。市内には落語みゅーじあむ(池田市立上方落語資料展示館)が設けられ、三枝さんはここの名誉館長でもあり、一門会を催すなど、この地での振興に努めています。地に足を着けながら、活動を広げる三枝さん。これからもまだまだ上方落語界のリーダーとしての活躍が期待されます。

(参考資料:上方落語協会ホームページ、「新友旧友」朝日新聞1985年日付不明)

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