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日めくり編集メモ 175

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全国ニュースではほとんど取り上げられませんが、沖縄県の最西端である八重山地区の中学校公民教科書に「新しい歴史教科書をつくる会」の流れを汲む育鵬社のものが選定され、物議を醸しています。

教科用図書八重山採択地区協議会は、石垣市、竹富町、与那国町の1市2町の教科書の選定を行います。会長は玉津博克氏。石垣市教育長でもあり、昨年3月に当選した中山義隆市長に任命された人物です。玉津会長の選定方法改革は、現場教員による調査員の順位づけを廃止し、協議会委員からも教師を外し、採択時に無記名投票を行うというもの。しかしこれは、「つくる会」系教科書が採択された自治体に共通した手法なのです。

2009年、横浜市では当時の中田宏市長が自分の主張に近い教育委員を選任し、現場の声を入れず強引に「つくる会」系教科書を採択しました。「つくる会」系推進派は、これを「成功事例」として同様の方法を提唱しています。玉津会長はこの運動を「知らない」としていますが、手法がここまで似ることもなかなかないでしょう。この改革に対して、沖縄県教育委員会なども指導や要請を行いましたが、会長は「内政干渉」として聞く耳を持ちませんでした。

この教科書の危険性は、どん・わんたろうさんがコラムで指摘していますが、「主権在民」よりも「天皇」、「基本的人権の尊重」よりも「公共の福祉による制限」と「国民の義務」に比重が置かれていること。国境の町の中学生は、基地問題をほとんど記述せず、「外国の脅威」と「軍隊あっての平和」が強調された教科書を使うことになるのでしょうか。折しも北澤防衛相が、2015年までに与那国島に自衛隊の沿岸監視部隊を配備すると発言しました。何とも不気味な符合です。

(参考資料:琉球新報沖縄タイムス育鵬社ホームページ

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