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日めくり編集メモ 182

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夜空を見上げると見事な月が。明日12日は旧暦8月15日の中秋の名月、すなわち「十五夜」です。きょう11日の月も「待宵(まつよい)」や「十四夜月(じゅうしやづき)」「小望月」と呼ばれ、季語になっています。これからしばらくは月の明るく美しい日が続きます。

俳諧で「月」といえば秋の月のことです。ほかの季の月は「春の月」「夏の月」「冬の月」と季節の名前をつけます。それほど古来この季節の名月を愛で賞する慣習があるのですね。やっと炎暑も終わり、すだく虫の音とともに、澄んだ秋の夜空にポッカリと浮かぶ月を眺めることは、なんとも心落ち着くことだったのでしょう。縁側などにススキや月見だんごを供えて月を祀りますが、サトイモを供える地域もあり、「芋名月」という季語もあります。

もし雲で見えなくても、その仄明るさを「無月」、雨が降っていたら「雨月」というくらいですから、古人がいかに名月を嘆美していたか、その気持ちが伝わってくるようです。さらに、その翌日からも月に名前がついており、順に言えば「十六夜(いざよい)」「立待月(たちまちづき)」「居待月(いまちづき)」「臥待月(ふしまちづき)」「更待月(ふけまちづき)」となります。名前のとおり、月の出がどんどん遅くなることが分かりますね。

美しい月を眺めながら、自然に生かされている己の卑小さを痛感していると、こうした自然とともに生きてきた私たちの文化自体をも破壊しようと――すなわち国土が汚されたこの期に及んでも原発を推進しようとする勢力への怒りが沸いてきます。きょうは3.11からちょうど半年。反/脱原発のデモやアクションが各地で開催されるようです。この文化を守るためにも、デモでもそれ以外の方法でも、とにかく声を上げ続けるしかありません。

(参考資料:新潮社編『新改訂版 俳諧歳時記 秋』新潮文庫)

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