建設が予定されている中国電力上関(かみのせき)原子力発電所の賛否が争点となった、山口県上関町長選挙。9月25日に投開票が行われ、推進派現職柏原重海さんの3選が決まりました。
推進派の柏原さんと反対派新人の山戸貞夫さんの一騎打ちだった今回の選挙。原発計画の浮上後過去8回の選挙ではいずれも推進派が勝利してきましたが、今回の選挙では前回に引き続きダブルスコアの大差がつきました。事実、前々回の選挙までは反対派が40%以上を得票していましたが、前回は33.12%、そして今回は32.63%とだんだん比率が下がってきているのが気がかりです。さらに言えば、有権者数自体も低下しています。
上関は下関(下関市)、中関(防府市)とともに防長三関のひとつで、かつては海上交通の要衝でしたが、鉄道の開通や船舶の大型化によって港が寂れ、過疎化が進んでいます。今年度、町は約11億円の原発交付金を受けており、一般会計予算の4分の1を占める額です。今回3選を果たした柏原さんは「財源確保のための原発」と主張していますが、それは原発自体の賛否ではなく原発以外にカネづるがないから依存せざるを得ないこの町の実情です。
柏原さんも、原発財源がなくなった場合の町づくりを考えなくてはならないと、その可能性に言及しています。今回の東電福島第一原発事故で思い知ったことのひとつとして、こうした選挙などの「地元の同意」があまりにも狭すぎることが挙げられます。事故で影響を受ける「地元」の広さ、多さを考えると、一自治体の判断で原発を云々できないことは明白なのに、そのシステムだけが残ってしまっていることの矛盾ばかりが感じられてなりません。
(参考資料:「新規原発の是非『福島』後初判断 上関町長選まで2ヵ月」中國新聞2011年7月26日付、『角川日本地名大辞典35 山口県』角川書店)