マガ9editor's room

マガ9編集部発の情報やスタッフが書いたコラムを随時お届けします。

日めくり編集メモ 197

| トラックバック(0)

先月29日、沖縄密約開示訴訟の控訴審で東京高裁は、密約文書の保有の証拠はないとして1審判決を破棄し、原告の逆転敗訴となる判決を言い渡しました。

沖縄密約開示訴訟は、1972年の沖縄返還の際、米軍基地の原状回復費など本来米国側が負担すべき支出を日本が肩代わりすることを日米間で合意した密約文書の開示を求め、作家の澤地久枝さんや元毎日新聞記者の西山太吉さんらが起こしました。1審・東京地裁では原告の主張が認められ、密約の存在の認定と、その文書の「不存在」を理由とした国の不開示を違法としました。

 

今回の高裁判決のおかしな点は、密約関連文書の存在を認めているにもかかわらず、国が不開示を決定した時点でその文書を保有していた証拠はないとして、国の処分を適法としたことです。文書が廃棄されたのなら、なぜ、どのようにして廃棄されたのかを明らかにすることと、その責任を国に迫ることこそ司法の責任でしょう。「ない袖は振られぬ」というだけでは、ただの現状追認です。

 

日米密約には当然相手国である米国の文書もあります。しかし控訴審では、それを代用品として証拠にすることすら拒みました。情報公開法にその規定がないとしての判断ですが、国民の側に立った情報公開の趣旨―「知る権利」をないがしろにするもの。何よりも文書を保管しなくてならない行政の「捨て得」を容認した時点で許しがたいものです。原告は今月12日、最高裁へ上告しました。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://daily.magazine9.jp/mt/mt-tb.cgi/572