マガ9editor's room

マガ9編集部発の情報やスタッフが書いたコラムを随時お届けします。

日めくり編集メモ 198

| トラックバック(0)

10月14日、沖縄総合事務局は、沖縄市の泡瀬沖合埋め立て事業(東部海浜開発事業)の工事を2年ぶりに再開しました。現在那覇地裁で審理中にもかかわらず再開を強行した行政の姿勢は強く批判されるべきです。

泡瀬沖埋め立て事業は、旧計画の経済的合理性を認めず、県、市に公金支出差し止めを命じた2009年の福岡高裁判決が確定しています。これを受けた市は埋め立て面積の縮小と「スポーツコンベンション拠点の形成」を柱にした新計画を策定し、県が埋め立て免許変更を承認しました。反対派住民は新計画の杜撰さを指摘し、再び公金支出の差し止めを求めて提訴。11月には第1回の口頭弁論が予定されています。

沖縄市はよく知られているように基地の町です。西側には米軍の基地が陣取っているため、開発には東の海側に進むしかないという事情もあるでしょう。それでも、この計画の見積もり自体が甘く、試算の根拠が県民や市民に充分に説明され、理解されているとは言えません。「用地がないから企業が誘致できないので、まずは埋め立て地を確保しなくてはならない」という市の主張は、本末転倒も甚だしいものです。

何より、貴重な海草や貝類、底生生物などが多く棲む南西諸島最大級の泡瀬干潟は生物多様性の宝庫。一度埋め立てられたら、その生態系は二度と戻りません。また、東日本大震災以降の町づくりとして地震や津波、液状化への対策が必要ですが、これも不明確なまま。裁判を無視し、5年に1度開催される「世界のウチナーンチュ大会」に合わせたかのような工事再開は、既成事実づくりを狙ったものにしか見えません。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://daily.magazine9.jp/mt/mt-tb.cgi/574