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日めくり編集メモ 199

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平野達男復興担当相の発言が「失言」であるとして、一部マスコミや野党が批判していますが、どうも言葉尻をとらえただけの揚げ足取りにしか見えません。

これは10月18日、福島県二本松市で開かれた民主党研修会で、東日本大震災の津波被害について「私の高校の同級生みたいに逃げなかったバカなやつがいる」と語った平野氏の発言です。翌日の産経新聞は1面でこれを「失言」と報じ、野党幹部も「閣僚として不適格」などと攻撃しました。鉢呂吉雄前経産相や松本龍前復興担当相が、その「失言」の責任をとって辞任していますから、大臣の首を取りたいのでしょう。

しかし、この発言の前後や平野氏の釈明を聞くと、亡くなった友人への悲しみと無念さが感じられます。悔しいからこそ親愛の情を込めて「バカ」と言ったのではないでしょうか。とするとこれは「失言」なのか。殊更に「バカ」をクローズアップし、そのキーワードだけを独り歩きさせる…鉢呂前経産相の「死の街」も同じような経過をたどったことは記憶に新しいところ。結果的に言葉狩りとなり、タブーとなる禁句が増えるだけです。

東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋さんは、末尾に「批判が出そうだ」と付け加えることで記者の主観や思い入れが入った記事が広がっていると指摘しています。こういった、言葉狩りとも言うべき揚げ足取りが幅を利かせると、自由な言葉や表現は封じられ、果ては政治家が真意を語らなくなるでしょう。片や、決して「失言」しない顔ぶれを考えると、官僚や東電幹部の能面のような顔が思い浮かびます。

(参考資料:長谷川幸洋「ニュースのことばは嘘をつく」第9回「『批判が出そうだ』という言葉狩り」:「週刊ポスト」2011年10月21日号)

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