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日めくり編集メモ 203

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だいぶ秋が深まってきました。ふと口をついて出たのは、小学校で習った唱歌『野菊』。「遠い山から 吹いてくる 小寒い風に 揺れながら」…今も音楽の授業で歌われているのでしょうか。

この『野菊』の作曲者、下総皖一は童謡や唱歌を多く手がけています。『はなび』『スキー』『かくれんぼ』『たなばたさま』『蛍』なども彼の作品。日本の近代音楽の基礎をつくったとも言われ、のちに東京芸大音楽学部長を務めた人物でもあります。また作詞者・石森延男は、児童文学の名作として知られる『コタンの口笛』の作者です。また長く国語教科書の編纂者を務めました。

キク科の植物は世界で2万種以上、日本には350種ほどの野菊が自生していると言われています。キクが、日本では昔から親しまれていることは言うまでもありません。この詞の中で「うすむらさき」と歌われているところからすると、ヨメナやノコンギク、オオユウガギクなどだったと思われますが、作詞者の石森は北海道出身ですので、エゾノコンギクではないかという人もいるようです。

この歌が作られたのは戦中で、1942年発行の国民学校音楽科の教科書に掲載されました。戦意高揚の意が感じられぬと軍部から異議が上がったそうですが、それがかえって幸いしたのか、戦後も、その作られた時代を感じさせない格調高く美しいメロディーとやさしい詞で、長く歌われ続けました。さきの詞はこう続きます。「気高く清く におう花 きれいな野菊 うすむらさきよ」

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