『サイボーグ009』『仮面ライダー』『佐武と市捕物控』などで知られたマンガ家・石ノ森章太郎。先月28日から、兵庫県宝塚市の市立手塚治虫記念館で、「“萬画”〜石ノ森章太郎の世界〜」展が開かれています(2012年2月20日まで)。
石ノ森は1938年、現在の宮城県登米市に生まれました。そのペンネーム「石ノ森」は生地の「中田町石森(いしのもり)」から。中学生のときからマンガの天才少年として名を馳せ、「漫画少年」の常連入選者でした。高校2年の5月、手塚治虫から「シゴトヲテツダツテホシイ」と電報を受け、学校を休んで上京。その年、「漫画少年」掲載の『二級天使』でデビューしました。その後のマンガの量産はご存じの通りで、「ひとりの著者が描いたコミックの出版作品数が世界で最も多い」としてギネス記録に認定されています。
1989年、マンガは「あらゆる事物を、一から萬の駒により表現でき、万人の嗜好に合う、無限大の可能性を含むメディア」であるとして、石ノ森は「萬画宣言」を行いました。実際、その作品の多彩さ、多様さは驚くほどです。さきに挙げた以外に少し指折るだけでも、少女マンガの『おかしなおかしなあの子』、大人マンガの『009ノ1』『HOTEL』、SFの『ミュータント・サブ』『ギルガメッシュ』、ギャグの『ドンキッコ』『がんばれロボコン』、さらに『マンガ日本の歴史』全55巻など、その執筆活動はまさに「萬(よろず)」といえるでしょう。
彼の記念館である石巻市の「石ノ森萬画館」は東日本大震災でたいへんな被害を受けました。7カ月たってもいまだに電気もガスも水道も止まったままとのこと。休館中ですが、それでも訪れていく人が多くいるそうです。今回の企画展は代表的な作品の原稿展示のほかに、石ノ森萬画館オリジナルアニメ「龍神沼」なども上映されます。被災後まもなく、石ノ森萬画館には手塚治虫記念館から早期再開を祈る応援ボードが贈られました。「マンガの神様」と「萬画の創始者」の「交流」が未だに続いていることに感慨を禁じえません。
(参考資料:石ノ森章太郎『石ノ森萬画館』メディアファクトリー、宝塚市立手塚治虫記念館ホームページ、石ノ森萬画館ホームページ)