今や沖縄の貴重な自然の象徴となった、ほとんど飛べない鳥。新種として約100年ぶりに発見されたこの鳥が「ヤンバルクイナ」と命名されたのは1981年のきょう11月13日のことでした。
ヤンバルクイナと命名される前から、沖縄では山で仕事をしている人の中にこの鳥を知っている人もおり、「アガチ(あわて者)」「ヤマドゥイ(山鳥)」などの名前で呼ばれていました。また、研究家や写真家が目撃したり撮影したりしたのですが、やはりその正体は分からずじまいでした。1981年、やっと成鳥・幼鳥各1羽の捕獲に成功し、沖縄県の天然記念物に指定されたのです。
体はおよそ30センチメートルで、全体には黒や暗褐色ですが、目の後ろに延びる白い帯と、くちばしと脚の赤が特徴的です。土の中の小動物をほじくり返して食べるためのくちばしと、飛べない代わりに発達している脚の太さが目立ちます。鳴き声は大きく、ねぐらは木の上。この命名で沖縄本島北部を指す「やんばる」が有名となり、翌年には国の天然記念物に指定されました。
この地域にはヤンバルクイナのほか、ノグチゲラ、ヤンバルテナガコガネなど、ここにしか棲んでいない「固有種」が生息しています。しかし、やんばるの森は開発にさらされており、外来種などによる捕食や側溝への落下、さらに交通事故などでその存在が脅かされています。今年のヤンバルクイナの交通事故件数は10月中に34件を記録し、過去最高になってしまいました。
(参考資料:山科鳥類研究所 ヤンバルクイナのページ、インターネット自然研究所・ヤンバルクイナ、「クイナ輪禍最多34件 エサ求め道路出る」沖縄タイムス2011年11月3日付)