『ゲゲゲの鬼太郎』で知られる漫画家水木しげるさんが戦争を描いた作品と、当時の新聞などを展示する企画展「日米開戦70年 水木しげるの戦争と新聞報道」が12月25日まで横浜市中区の日本新聞博物館で開かれています。
水木さんの人生は、朝の連続ドラマ「ゲゲゲの女房」で描かれたことで有名になりました。ドラマは夫人の武良布枝さんの視点からですので、直接的には触れられませんでしたが、左腕を失った自身の戦争体験は苛酷そのものでした。1943年、水木さんは南方戦線のニューブリテン島(現パプアニューニギア)に二等兵として送られたのです。
現場はまさに極限状態でした。兵器と食糧が決定的に不足している上、蔓延するマラリアを患って戦病死する兵士は続出。地獄のようなこの体験を基にした作品である『総員玉砕せよ!』や、『幽霊艦長』『ダンピール海峡』などの優れた戦記ものを水木さんは多く発表しています。現在、講談社文庫やちくま文庫などで読むことが出来ます。
この展覧会には、これら水木さんの作品のパネル90点とともに、あり得ない勝利の虚報と精神論を鼓舞するばかりの、情報統制下にあった当時の紙面が並んでいます。戦争体験が遠い日のものとはいえ、大本営発表に代表される、景気のいい言葉ばかりの新聞と、悲惨極まりない実際の前線との落差が物語るものは、今でも…。
(参考資料:日本新聞博物館ホームページ、玉木研二「2等兵の目で」毎日新聞2011年11月8日付朝刊「火論」)
※ 問い合わせは、日本新聞博物館=電話045(661)2040=へ。