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日めくり編集メモ 227

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政府や東京電力の記者会見に出席して舌鋒鋭く追及し、福島の原発事故で被災した人々のために活動し彼らとともに涙する、マガジン9の連載「脱ってみる?」でもお馴染みのおしどりのお二人。熱情溢れる彼らの原点はどこにあるのでしょう。

おしどりさんの本業は、マコさんのアコーディオンに合わせてケンさんが針金を細工する音曲漫才。ケンさんのボケに突っ込むマコさんの意気もぴったりです。彼らの師匠は、音楽ショーグループ「横山ホットブラザース」のアコーディオン担当であるアキラさんですが、一時期、漫才の夢路いとし・喜味こいしさんに預けられていたということです。ここで、いとし・こいしさんにいろいろと芸談を伺っていました。

いとし・こいしさんは戦前から荒川芳博・芳坊の名で活躍していた兄弟漫才コンビです。戦争が始まってから、いとしさんは体が弱かったこともあって徴用・徴兵されることはありませんでしたが、こいしさんは徴兵され、配属された広島で被爆しました。お二人の、戦争を憎む気持ちは強く、また、戦争への士気を煽るような漫才をしてしまった自分たちに対してずっと反省しつづけていたそうです。

1991年の湾岸戦争に触発されて発表した「我が家の湾岸戦争」は、戦争を夫婦喧嘩に矮小化し、地口で笑いのめすもので、晩年の得意ネタでした。この演目などによって、いとし・こいしさんは1992年度の芸術選奨を受賞しています。おしどりさんはお二人の謦咳に接し、民衆の側に立つことの大切さを知ったといいます。福島の人々に寄り添うおしどりさんの原点は、いとし・こいしさんだったのですね。

(参考資料:夢路いとし・喜味こいし『浮世はいとし人情こいし』中央公論新社、喜味こいし・戸田学聞き手『いとしこいし想い出がたり』岩波書店)

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